駆除とリリース禁止の捻れた関係

大津港の外来魚駆除ボックス

「日本の内水性魚類を管轄する水産庁は、外来魚移植問題に対して早急に断固とした措置をとらねばならない。外来魚対策委員会が発足して三年になるというのに、反応が鈍すぎはしないだろうか。たとえば琵琶湖の漁師に対する有害魚駆除補助金を、期限つきで大幅に引き上げる。(期限つきでないとそれ自体が目的化して”経済資源”になる危険性がある。)違法な放流に対しては、誘拐や列車転覆に対するのと同じくらいに捜査と摘発を強化する。この環境破壊犯はそれほどの重罪にあたるのだ。「環境破壊防止法」を制定して厳罰を適用する以外に方法はない。すでに紹介したように、環境保護先進国は違法な移殖等に対する極めて重い罰則と、駆除に対する高額な賞金で対処している、釣り人に対しても、例外的な指定地以外は、ブラックバスやブルーギルやブラウンマスといった有害外来魚が釣れたら必ず持ち帰るなりして駆除する罰則付き義務を負わせるべきだろう」(本田勝一著「日本環境報告」朝日文庫)

釣り師の本棚 本田勝一著「日本環境報告」(16/10/25)http://bassingkawaraban.blog.fc2.com/blog-entry-1259.html



初出は朝日ジャーナル1992年1月3日/10日合併号。ということは、書かれたのは1991年末以前ということになります。空前のバスフィッシングブームが起こったのは90年代半ばのことですから、ブームを横目で見ながら書かれた文章ではありません。その着眼点の鋭さと問題意識の持ち方は、さすが大朝日の人気記者だけのことはあります。

特に注目すべきは、すでにこの時点で「有害外来魚が釣れたら必ず持ち帰るなりして駆除する罰則付き義務を負わせるべき」とリリース禁止を提起してることです。日本環境報告は外来種問題を扱った本としては大して評価されてませんが、リリース禁止に関しては嘴矢であり、後にもたらした影響は決定的なものがあります。

その反面、駆除補助金の大幅引き上げは目的化を防ぐために期限付きにするとか、不法放流に重い罰則を設けて捜査と摘発を強化するといったことはまったく実現してません。つまり、リリース禁止だけ都合よく採用して、あとはほったらかしの美味しいとこ取りをされたわけですね。

駆除やリリース禁止を正当化する論理も、この本から後の人が多くを引き継いでますが、まったく発展も強化もできてません。逆にいろんな指摘に対してその場しのぎで根も葉もない適当な反論をしまくって劣化させてます。さらに問題なのは、この本に書いてあることの間違いや欠点もまるごと引き継いでしまってることです。

その欠点とは、バスの拡散はすべてバスアングラーと釣り業者のせいだと決め付けて犯罪者扱いしてることです。それを引き継いだ人達の一部は、自分達が拡散の張本人であるかもしれないにもかかわらず、もっぱらバスアングラーと釣り業者責任論を盾に利権拡大に勤しんでます。そのことについては3日前の記事にも書いたから、そちらをご覧ください。


ニュースのこっち側 ミドリガメを今すぐ特定外来生物に指定できない本当の理由(16/10/27)http://bassingkawaraban.blog.fc2.com/blog-entry-1270.html

拡散に関わってない人達も、この無茶な論理から一歩も踏み出さず進化もしないから、都合が悪いことが露呈する度に表と裏を使い分けて欺し欺し事を進めるしかありません。最初の間違いを認めないまま後から何を言っても、信用も協力もしてもらえるわけがありません。それどころか、恨みを買ってテロリストが出てくる恐れすらあります。

日本環境報告は600ページ余の分厚い文庫本ですが、外来魚に関する項はわずか21ページに過ぎません。それを脳内妄想で1冊の新書にまで拡大した本が、バスフィッシングブーム真っ盛りの1999年に登場します。お花畑時代の始まりです。

「すぐやるべきこととしては、私はやはり『バス絶対駆除、バス釣り禁止』を訴えたい。ここまでバスの生息域が拡がってしまった今、もっとも現実的な解決策が『棲み分け論』だというのは、私にも理解できる。湖沼河川をバスがいてもいい湖(川)、駆除すべき湖(川)に分け、管理するという意見だ。それでもあえてバス駆除とバス釣り禁止を訴えるのは、多くの人の心の中に、本当の意味で生き物の安易な移植に関する恐れや危機感が根づかない限り、『棲み分け』が実現し、守られることはないだろうと思うからだ。バスを放流する人はこっそり放流するんだろうし、それに対して、一般の人たちも『生き物がいないより、いたほうがいい』などと考えたりするのではないかと心配なのだ」(秋月岩魚著「ブラックバスがメダカを食う」宝島社新書)



「心配」なだけで釣り禁止にされたらたまったものではありませんが、まぁ某釣り出版社から邪険にされたカメラマンが恨み辛みで書いてるだけだから、何が何でもバス釣り禁止に持って行きたいんでしょうね。「思うから」「心配」だから、「バス絶対駆除」で「バス釣り禁止」。そこには事実に基づく論理的思考も、帰納と演繹による普遍化も、冷静な将来計画も何もありません。

棲み分け論について「理解できる」などと書いてるのは、一応考えましたというポーズを見せるために必要だからであって、実はぜんぜん理解できてないし、最初からする気もありません。最終目的が恨みを晴らすことだから、その目的に向かってまっしぐら。邪魔者は蹴散らして進む姿勢は、この国の政治に通じるものがあります。

ここで注目すべきは、日本環境報告から約8年の歳月を経て、リリース禁止からバス釣り禁止に妄想が肥大化してることです。リリース禁止なんて甘いことではダメだ。バス釣り自体を禁止にして、日本の国から消滅させないと、恨みは晴れないってことでしょうか!? 某出版社も恨まれたものですね。そんなことも知らず、霞ケ浦でお祭りに浮かれてる人達は何やねんと思ってしまいます。

何が何でもバス釣り禁止はお花畑な妄想の産物に過ぎず、漁業法の枠内で無主物であるバスを釣ることを禁止するのはさすがに無理があります。そこで仕方なく、リリース禁止を攻撃手段にして現在に至ってるわけですね。そのことが、この2冊の本を読み解くことでわかってきます。つまり、本当にやりたいのはバスフィッシング禁止だけど、法律上それができないから、次善の策としてのリリース禁止だということですね。戦略核は倫理上使えないから、戦域核でがまんしとくかってなもんです。

リリース禁止が成功した水域は日本のどこにもありません。厳重にリリースを禁止したら、釣りに来るバスアングラーが激減して、バスは減るどころか逆に増える恐れすらあります。ずっとそう言い続けてきましたが、実は相手にとってそんなことはどうでもよくて、バスフィッシング禁止のかわりのリリース禁止でバスアングラーをフィールドから追い出すことができればそれでいいわけです。

バスアングラーが減ってバスが増えたら、その分は自分達が駆除を請け負って仕事になるから、ダブルでうれしい結果になります。そこから出て来るのが、駆除とリリース禁止の捻れたセット関係です。表向きは、リリース禁止で駆除をバックアップとか言ってますが、そんなの嘘っぱちもいいところ。趣味で駆除する人達がいくらがんばっても、人数はたかが知れてます。バスフィッシングで死んでる量の比ではありません。琵琶湖のリリース禁止でその点を突っ込んだら、どうにも反論し切れなくなって、最後は外来魚政策の象徴とか言い出したのには笑ってしまいました。

リリース禁止は駆除政策を正当化するための方便に過ぎず、実際の効果はないし、期待されてもいません。それでもリリース禁止にしようとするのは、バスフィッシング禁止にかわってバスアングラーをフィールドから締め出すための手段だからです。そんな浅はかな考えに至るのは、バスアングラーと釣り業者を悪者に仕立て上げた2冊の本とそれを真に受けたアホなメディアの影響が連綿と続いてるからです。

最初の間違いを正すことなく、バスアングラーと釣り業者を敵に回したまま駆除政策を進めてきた結果、どうなったでしょうか。アユ釣りも渓流釣りも釣り客が減る一方で、河川漁協は疲弊にあえいでます。入漁料収入がガタ減りだから、またもバス釣り愛好家がぁ〜!! 釣り業者がぁ〜!! で駆除するから補助金よこせです。

バスフィッシングとワカサギ釣りを両立させて成功してる湖はあちこちにありますよね。どちらも移入種なんですけど、そういう所では生態系がぁ〜!! とか希少種がぁ〜!! ってほとんど言われないのは不思議です。例えば下の記事を読むと、何もかもすべて人間の都合、それも主に金儲けのための都合に過ぎないことがよくわかります。

「支笏湖には在来種のアメマスとハナカジカのほか人が持ち込んだサクラマスやニジマスなども生息する。ヒメマスは明治時代に阿寒湖(釧路市)とチミケップ湖(オホーツク管内津別町)から持ち込まれた。菊池さんは『ヒメマスも元は、外から入ってきた魚。湖の中の環境は常に変化しており、観光、漁業関係者や研究者が連携し、共生のためのルール作りに取り組む必要がある』と指摘する」


支笏湖のヒメマス漁に影響? ブラウントラウト急増か(どうしんウエブ 16/10/28)http://dd.hokkaido-np.co.jp/news/science/science/1-0331646.html

バスアングラーと釣り業者を悪者にして敵に回したために、お客さんになってもらうことができなくなり、八方塞がりになってしまって駆除に走るしかないという大ジレンマ。これはもう環境省と水産庁と全内魚による政策の大失敗以外の何ものでもありません。かと言って、今さら間違ってました、失敗しましたとはならんやろうしなぁ・・・。

人間、誰でも間違いは認めたくないし、自分が欺されてたとは思いたくないものです。だけど、それを乗り越えないと成長も進歩もありません。間違いを隠し通すために嘘に嘘を重ねる。欺されてたと思いたくないから、居直って自分を正当化するために金儲けやお花畑活動などの代償行為に逃げる。この先死んでいくだけの人達はそれで逃げ切れるかもしれませんが、残された人達や釣り場に対してあまりにも無責任過ぎます。これって今の日本の国のありようそのままの劣化コピーみたいなものですよね(泣)


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